小児科初期研修プログラム
研修責任者:梶原 敬一
- 小児の医療の基本は、何よりも症状の把握にある。それは、言語の獲得過程における症状の表現が身体的な表出のレベルから子ども特有の表現、さらに大人に対する特別の態度という形で、成人におけるようなストレートな表現とは全く異なったものであるからである。しかし、病む人はどのような人であっても少なからずこの小児において示される様々な段階の表現をあわせもっており、それを全体として把握することこそ全人的医療の基本的な出発点とならなければならない。
- 人は誰も一人では生きておらず、特に小児はそれを保護する者、養育する者と生活や行動をともにすることで生きていくことができる。病気もその小児を中心とする社会全体の疾病としてとらえられること、また治療においても小児とともにそれを保護する者、養育する者が協力してあたらなければ治療行為は成立しない。従って小児は小児をとりまく大人たちの中で社会的に治療されなければならない。
- 小児に特有の疾病としては、出産に伴う様々な疾病、遺伝的素因がつよいもの、或いは発達(精神・運動)に伴うもの、そして身体的成長・成熟に伴うものがあげられる。
- 小児に最も多く見られる疾患は、細菌やウィルス等による感染症があげられる。また、罹病率の上昇しているアレルギー疾患(アトピー性皮膚炎、気管支喘息)もあり、成人とは異なった見方を必要とする。
- さらに、急増している「こころの病気」としての不登校、自殺、さらに虐待を重大な医療的問題としてとらえることで、その背景にある小児が成人となっていくことを通してあらわれてくる様々な症状に適切な対応をすることが求められている。
- そして最後に小児がたんに小児としてあるのではなく、将来、成人となり成人病として経験する病をその生活の中に、また素因の中に持っていることを理解して、小児を通してその人の人生全体を見渡した対応を求められている。
以上の1)~6)の6つの視点を持って小児科の臨床を経験することこそ全人的医療の基本であることを十分に理解し、小児を診る視点をもって全ゆる治療の基本とする意識をもつことを目的とする。
これを主目的として、出来るだけ症例にふれる経験を通して、緊急時にあっては小児科治療のマニュアルを参考にして実際に治療がすすめられる手技を体得することを具体的な技術獲得目標とする。
・2年目(必修)1ヶ月
・2年目の選択科のうち、Aコースでは1〜9ヶ月、Bコースでは1〜11ヶ月選択できます。
目的の1)~6)にそって次のように定める。
- 外来診療の場で、診察技術、問診、さらに家族或いは保護者等との対応の仕方を学び、疾患の重篤度、緊急性の判断が的確に出来るようになること。
- いわゆる外来においてみられる‘Common disease’である感染症、アレルギー性疾患については、具体的症例を通して、疾患の理解ではなく病態の把握に努めること。そして適切な投薬とは何かを問い直して、漫然と解熱薬を投与したりすることのないような意識を育てること。
- いわゆる心身症的なものへのアプローチは、非常に難しいが、本院で実施している箱庭療法について理解し、それを通して自分自身に最もふさわしい心理療法的技法とは何かをさぐり、ある程度その技法についてまとめていくこと。
- 肥満、喫煙、生活習慣等が小児から成人へと成育していく中でいかなる影響を与えていくかを理解し、それについて医療的介入がどのような形でなされるべきかについて、これまでのやりかたにとらわれず、それぞれが自分の考えをまとめてみること。
- 下記の基本的な治療法・手技ができる。
※印は必須、その他は症例による。
※ ➀ 採血(新生児、幼児、小児)
※ ➁ 静脈ルート確保
※ ➂ 輸液療法の確立
※ ➃ 基本的な治療法
腰椎穿刺、骨髄穿刺、酸素投与(マスク・チューブ)、吸入法、胃洗浄、高圧浣腸、心肺蘇生法 - 下記の基本的な検査を受持患者の検査として経験し、結果を解釈できる。
※印は必須、その他は症例による。
※ ➀ 尿一般検査
※ ➁ 検体採取法(尿、便等)
※ ➂ X線単純読影
※ ➃ X線CT読影
※ ➄ 脳波読影
※ ➅ 心電図読影並びに記録
腹部超音波検査、心臓超音波検査
下記の疾患の診療(外来診療又は受け持ち入院患者)を自ら経験する。
小児けいれん性疾患、小児ウィルス感染症、小児喘息